親から実家を相続したものの、誰も住んでいない。住み替えで以前の家が空いたまま。「いつか活用しよう」「取り壊すのも費用がかかるし……」と思いながら、気づけば何年も経っていた。そんな「空き家の先送り」は、日本全国で起きている身近な問題です。
国土交通省の調査によれば、全国の空き家数は2023年時点で約900万戸に迫り、今後も増加が見込まれています。しかし多くの空き家所有者が、その深刻なリスクを十分に理解していません。
2023年と2024年には、空き家に関する重要な法改正が相次いで施行されました。「空き家対策特別措置法(空家法)の改正」と「相続登記の義務化」です。この2つの法改正により、空き家を「放置」することのコスト・リスクは、以前と比べて格段に高まっています。
本コラムでは、不動産売買仲介のプロとして、空き家を放置することで生じる維持費・税金・法的リスクを詳しく解説するとともに、早期売却のメリットと活用できる税制特例をわかりやすくご紹介します。「とりあえず後回し」は、もはや得策ではありません。ぜひ最後までお読みください。
目次
日本では少子高齢化・人口減少が進む中、使われない住宅が増え続けています。特に相続を契機とした空き家の発生が顕著で、国土交通省の調査では、空き家を所有することになった理由の半数以上が「相続による取得」とされています。
また、住み替え・転勤・施設入居などにより自宅が空き家になるケースも少なくありません。問題は、こうした空き家が「とりあえず置いておこう」という感覚のまま放置されやすいことです。
1.「いつか使うかもしれない」という感情的なつながり(故人の思い出、将来の活用期待)
2.「何もしなければ費用がかからない」という誤解(維持費・税金は放置中も発生)
3.「売れるかどうかわからない」「手続きが面倒」という不安と後回し癖
しかし、空き家は時間が経つほど価値が下がり、リスクが高まり、手放しにくくなる一方です。「先送り」こそが最大のリスクといっても過言ではありません。
「空き家にしておけばお金がかからない」と思っている方が多いのですが、実はそうではありません。空き家であっても、所有しているだけでさまざまな費用が発生し続けます。
不動産を所有している限り、固定資産税と都市計画税(都市計画区域内)は毎年必ず課税されます。
| 項目 | 内容 |
| 固定資産税 | 固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率) |
| 都市計画税 | 固定資産税評価額 × 最大0.3%(市街化区域内) |
| 住宅用地特例(土地) | ・200㎡以下の部分:評価額を1/6に軽減(小規模住宅用地) ・200㎡超の部分:評価額を1/3に軽減(一般住宅用地) |
住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、土地の固定資産税が大幅に軽減されます。これが空き家を「解体せずに放置」する誘因になっていましたが、法改正により、放置状態が悪化すると特例が外れ税負担が急増します(後述)。
空き家であっても、建物を維持するための費用は継続的にかかります。人が住まない建物は急速に劣化するため、放置すればするほど将来の修繕費が増大します。
●草刈り・清掃・害虫駆除などの管理費:年間数万〜十数万円
●外壁・屋根・水道管のメンテナンス費用
●火災保険・地震保険(建物保険):年間数万円〜
●電気・ガス・水道の基本料金(完全停止しない限り発生)
●修繕積立(マンション区分所有の場合は管理費・修繕積立金も毎月発生)
人が定期的に出入りしない空き家は、通気が悪くなりカビや木材腐朽が進みやすく、給排水管の劣化も早まります。数年放置するだけで、数百万円規模の修繕費が必要になることも珍しくありません。
将来的に空き家を解体する場合、建物が傷んでいるほど解体費用は高くなる傾向があります。一般的な木造住宅の解体費用は建物面積に応じて100〜300万円程度が目安ですが、劣化が激しい建物や隣接建物との距離が近い場合はさらに割増となります。また、アスベスト含有材が使用されている場合は、別途除去費用が加算されます。
2023年12月13日、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行されました。この改正により、空き家所有者への規制はこれまでより大幅に強化されています。
改正前の空家法では、倒壊の危険など深刻な問題が生じた段階で「特定空家」に認定し、行政が勧告・命令・代執行を行うことができました。しかし実際には、特定空家に認定されるまでの「手前の段階」で放置されている空き家への対応に限界がありました。そのため、特定空家になる前の段階から行政が介入できる仕組みが必要とされ、法改正に至りました。
今回の改正で最も重要な点は、「管理不全空家」という新たなカテゴリーが創設されたことです。
| 空き家の区分(改正後) |
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【特定空家】 |
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【管理不全空家】(2023年改正で新設) |
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【一般の空き家】 |
従来は「特定空家」になって初めて行政が動けましたが、改正後は「管理不全空家」の段階から指導・勧告の対象となります。つまり、見た目にはそれほど悪化していなくても、適切な管理がなされていなければ行政から指導を受ける可能性があります。
空き家所有者にとって最大の経済的インパクトとなるのが、固定資産税の住宅用地特例解除です。
従来は「特定空家」として勧告を受けた場合に特例が解除されましたが、2023年の改正により「管理不全空家として勧告を受けた場合」も解除対象に加わりました。
| 住宅用地特例が解除されると…… |
| ● 固定資産税が「最大6倍」に増額(小規模住宅用地の場合) |
| ● 都市計画税が「最大3倍」に増額 |
| 【具体例】土地の固定資産税評価額が1,500万円(200㎡以下)の場合 ・特例あり:1,500万円 × 1/6 × 1.4% = 約3.5万円/年 ・特例なし:1,500万円 × 1.4% = 約21万円/年 → 年間約17.5万円の増税! |
ポイントは、管理不全空家として「指導」を受けた段階では特例は維持されますが、改善されずに「勧告」を受けると特例が解除されることです。勧告前に対処することが重要です。
●所有者の管理責任強化と国・自治体の施策への協力義務の明確化
●「空家等活用促進区域」の新設(市区町村がエリアと活用方針を設定できる制度)
●緊急時代執行制度の創設(命令の事前手続きが取れない場合、自治体が代執行可能)
●財産管理人選任の請求権を市区町村長にも付与
●所有者情報の把握のため、電力会社等への情報提供要求が可能に
2024年4月1日から、「相続登記の義務化」がスタートしました。これは不動産登記法の改正によ
るもので、空き家問題にも直結する重要な制度変更です。
これまで相続登記(相続による不動産の名義変更)は任意でした。そのため、相続後に名義変更をせず放置した結果、全国に約410万ヘクタール(九州の面積を超える広さ)もの「所有者不明土地」が生まれ、深刻な社会問題となっていました。所有者不明の土地は、公共事業・災害復旧・空き家対策など様々な場面で支障をきたします。
| 相続登記 義務化のポイント |
| ● 期限:相続(遺言含む)で不動産を取得したことを知った日から「3年以内」 遺産分割が成立した場合は、その成立日から「3年以内」 |
| ● 罰則:正当な理由なく義務に違反した場合、「10万円以下の過料」 |
| ● 遡及適用:2024年4月1日以前の相続も対象(過去分の猶予期限:2027年3月31日まで) |
| ● 住所変更登記の義務化(2026年4月施行予定):氏名・住所変更は2年以内に届出。 違反した場合は5万円以下の過料 |
相続登記を放置することは、過料リスクだけではありません。実務上、以下のような深刻な問題が生じます。
●不動産の売却・活用ができない(登記名義人でないと売買契約ができない)
●新たな相続が発生するたびに権利関係が複雑化し、手続きが困難になる
●相続人の一人が多額の借金を抱えた場合、債権者が代位で登記・差押えをするリスク
●空き家対策の行政手続きで所有者として対応できない
特に「ずっと放置していたら、いつの間にか相続人が10人以上になっていた」というケースは実際によく見られます。相続登記をすることで権利関係を明確にし、早期に売却・活用の準備を整えることが重要です。
遺産分割協議がまとまらず、すぐに相続登記ができない場合でも、「相続人申告登記」という制度を利用することで、とりあえず義務を履行できます。相続人の一人が単独で「登記上の所有者について相続が開始したこと」と「自分が相続人であること」を申請するもので、正式な相続登記とは異なりますが、過料を避けるための応急措置として有効です。
ここまで述べてきた内容も含め、空き家を放置することで生じるリスクを整理します。
| リスクの種類 | 具体的な内容 |
| 経済的リスク | 維持費・管理費の継続発生、建物の資産価値の下落、固定資産税の増税(最大6倍)、解体費用の増大 |
| 法的リスク | 相続登記義務違反による過料(10万円以下)、管理不全空家・特定空家への指定、行政からの勧告・命令・代執行 |
| 賠償リスク | 外壁・屋根の落下、樹木の倒壊等による第三者への損害賠償責任(所有者責任) |
| 防犯・防災リスク | 不法侵入・放火・犯罪の温床化、地震・台風による建物倒壊・周辺被害 |
| 近隣関係リスク | 草木の繁茂・ゴミの不法投棄・悪臭・害虫の発生による近隣トラブル |
| 相続リスク | 相続登記未了のまま新たな相続が発生し、権利関係が複雑化して売却不能になる |
民法上、土地・建物の所有者はその物件が原因で他人に損害を与えた場合、原則として損害賠償責任を負います(民法717条・工作物責任)。空き家の外壁や瓦が落下して通行人が怪我をした場合、老朽化した建物が隣家に倒れ込んだ場合などは、所有者が多額の賠償を求められる可能性があります。建物の管理が不十分であれば故意・過失がなくても責任を問われることがあるため、空き家の状態管理は法的義務でもあります。
空き家を「放置」するリスクと費用が明確になったところで、もう一方の選択肢である「売却」のメリットと、利用できる税制特例をご紹介します。
●維持費・固定資産税・管理費などのコストから解放される
●建物が劣化する前に高い価格で売却できる可能性が高い
●相続登記をきっかけに権利関係を整理し、すっきりと手放せる
●売却益を次の資産形成や生活資金に活用できる
●近隣や行政とのトラブルリスクをゼロにできる
不動産仲介のプロとして強調したいのは、「売れない空き家はない」ということです。もちろん立地や状態により価格は異なりますが、適切な価格設定と売却戦略により、多くの空き家は売却できます。「どうせ売れない」と諦める前に、まずは査定を依頼することをお勧めします。
相続した空き家を売却する際、一定の要件を満たすことで「譲渡所得から最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除」できる特例があります(租税特別措置法35条)。
相続空き家の3,000万円特別控除 主な要件
| 【対象となる建物】 |
| ● 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準) |
| ● 相続開始直前まで被相続人が居住していた家屋 |
| ● 相続後、事業・貸付・居住に使っていないこと |
| 【売却要件】 |
| ● 相続開始日から3年目の年末(12月31日)までに譲渡すること |
| ● 売却価格が1億円以下であること |
| ● 売却時に耐震基準を満たすリフォーム実施、または建物を取り壊して更地で売却 |
| ● 2024年1月以降は、買主が取得後に耐震改修・取り壊しを行う場合も対象(改正後) |
※ 2027年12月31日までの譲渡が対象(適用期限は随時確認を)
この特例は非常に有利な制度ですが、要件を満たさないと適用されません。特に「相続開始から3年目の年末まで」という期限は絶対的なため、相続後は早めに売却を検討することが重要です。適用可否については、不動産会社または税理士にご相談ください。
住み替え等で空き家になった旧自宅(マイホーム)を売却する場合にも、「居住用財産の3,000万円特別控除」(租税特別措置法35条)が利用できる場合があります。
●居住しなくなった日から「3年目の12月31日まで」の売却が必要
●売却した年の前年・前々年に同特例または買換え特例を使っていないこと等の条件あり
●さらに所有期間が10年超の場合、軽減税率(長期譲渡所得の特例)も併用可能
旧自宅が空き家になった場合も、できるだけ早期の売却が節税につながります。「住まなくなってから3年経ってしまった……」という方も、まずは現状を確認するためにご相談ください。
空き家を解体して更地にしてから売却するケースもありますが、いくつか注意が必要です。
●更地にすると「住宅用地の特例」が適用されなくなり、固定資産税が最大6倍になる(解体前に売却するほうが税負担が小さいケースが多い)
●解体費用を先行投資しても、必ずしも売却価格が上がるわけではない
●ただし建物の状態が著しく悪化している場合は、解体済みのほうが買い手がつきやすいケースもある
「解体してから売るべきか」「そのまま売るべきか」は物件の状態や立地によって判断が異なります。不動産会社に相談の上、最適な売却方法を選択してください。
「売却はしたくないが、放置もしたくない」という方には、空き家の「活用」という選択肢もあります。
| 活用方法 | 概要・向いているケース |
| 賃貸住宅 | 立地が良ければ最も安定した収入源。リフォーム費用と管理コストが必要 |
| 民泊・旅館 | 観光地・都市部で需要あり。許可申請・運営コストが必要 |
| 空き家バンク | 自治体が運営する空き家・空き地のマッチングサービス。移住希望者との接点 |
| 賃貸倉庫・駐車場 | 建物活用が難しい場合でも土地活用が可能 |
| グループホーム等 | 障害者・高齢者向け施設への転用。補助金制度あり |
| 売却(仲介) | 早期にコストとリスクから解放される最も確実な方法 |
活用の可否は立地・建物状態・資金状況などにより大きく異なります。まずは専門家にご相談いただき、選択肢を整理することをお勧めします。
多くの自治体では、空き家の活用・解体・リフォームを支援する補助金制度を設けています。
補助金の内容・要件は自治体によって異なります。お住まいの市区町村の担当窓口または当社にお問い合わせいただければ、利用可能な制度をご案内できます。
空き家をお持ちの方は、以下のチェックリストで現状を確認してみましょう。
| ■ 法務・登記チェック |
| □ 相続登記は完了しているか(2024年4月以降の義務化への対応) |
| □ 2024年4月より前の相続で未登記のものはないか(期限:2027年3月31日) |
| □ 登記名義人の住所・氏名変更は届出済みか(2026年4月施行予定の義務化に備えて) |
| □ 遺産分割協議は完了しているか(未了の場合、相続人申告登記の検討を) |
| ■ 管理状況チェック |
| □ 外壁・屋根・窓に破損・腐食はないか |
| □ 敷地内の草木が繁茂していないか(近隣・道路への越境はないか) |
| □ ゴミの不法投棄や不審者の侵入痕はないか |
| □ 水道・電気の設備は適切に管理されているか |
| □ 定期的に建物内外の点検を行っているか |
| ■ 税金・費用チェック |
| □ 固定資産税・都市計画税を毎年納付しているか |
| □ 建物の火災保険は継続しているか |
| □ 年間の維持管理コスト(管理費・保険・税金)を把握しているか |
| □ 住宅用地の特例が適用されているか(市区町村の納税通知書で確認可能) |
| ■ 今後の方針チェック |
| □ 空き家の今後の活用方針(売却・賃貸・維持・解体)は決まっているか |
| □ 相続した空き家の場合、3,000万円特別控除の期限(相続開始から3年目の年末)を確認したか |
| □ 住み替えによる旧自宅の場合、特例適用の期限(住まなくなった日から3年目の12月31日)を確認したか |
| □ 空き家の現在の査定価格を把握しているか(無料査定を活用) |
空き家を放置することのリスクは、2023年・2024年の法改正によってかつてないほど大きくなっています。
維持費・税金は毎年かかり続け、建物の価値は時間とともに下がります。管理が行き届かなければ「管理不全空家」に認定され、固定資産税が増額されるリスクも現実のものとなりました。さらに相続登記の義務化により、名義変更を放置することも法律違反になります。
一方で、早期に行動することで節税特例を最大限に活用でき、維持コストから解放され、次のステップへと進めます。「空き家をどうすればよいのか」という漠然とした不安は、専門家に相談することで必ず道が開けます。
当社では、空き家の無料査定・売却相談を承っております。「まず価格だけ知りたい」という方も大歓迎です。お気軽にお問い合わせください。
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