住宅ローンを完済すると、ようやく一息つけたように感じるものです。しかしその裏で、多くの方が見落としやすい大切な手続きがあります。
それが、法務局で行う 「抵当権(ていとうけん)抹消登記」 です。
「ローンを返したのだから、自然に消えるはず」と思われがちですが、抵当権は 完済しても自動では消えません。
登記簿上には、ローン返済前と同じように“担保の痕跡”が残ったままです。
放置してもすぐに困るわけではないものの、書類の紛失や再発行手続きの必要など、後から余計な手間や費用がかかる原因 になることも少なくありません。
また、売却予定がある場合は、抵当権が残った状態だと買主側の手続きや印象にも影響する可能性があります。
抵当権抹消は、登記の中でも比較的シンプルで、費用を抑えてご自身で完了できる手続き です。
この記事では、
を、うるラボが分かりやすく解説します。
「忘れてた…!」と後悔しないように、まずはこの導入部分からチェックしていきましょう。
目次

抵当権とは、ローンを組んだ際に金融機関があなたの不動産を担保にするために、法務局の「登記簿(登記事項証明書)」に設定した記録です。
多くの方が勘違いしがちですが、住宅ローンを完済しても、登記簿上のこの記録は銀行や法務局が自動で消してくれるわけではありません。なぜなら、この手続きは「所有者であるあなた自身」が行うとされているからです。
金融機関から送られてくるのは、「抵当権を抹消していいですよ」という手続きに必要な書類一式のみ。この書類が手元に届いた時点で、金融機関の役割は終わり、手続きは所有者へ委ねられ、多くの人はそのまま書類を保管し、「忘れてしまう」状態になります。
抵当権の抹消を忘れていても、すぐに売却できなくなるわけではありません。実際の売却では、ローンを完済したタイミングで司法書士が抹消登記を行うのが通常です。
ただ、完済後に長く放置していると、以下のようなリスクが高まります。
手間を増やさないためにも、「完済したら登記を確認して抹消する」ことを強くおすすめします。
【重要】売却を検討し始めたら、「ローン完済済み=手続き完了ではない」ことを思い出し、すぐに登記簿を確認しましょう!

「売却よりも前に、自己資金でローンを完済した方」は、費用を抑えてご自身で手続きが可能です。費用は基本的に登録免許税(不動産1件につき1,000円)のみで済みます。
ローンを完済すると、金融機関から以下の抵当権抹消に必要な書類一式が郵送で届きます。これらを失くさないよう、厳重に保管してください。
| 書類名 | 役割と注意点 |
| 登記原因証明情報(弁済証書・解除証書など) | 抵当権が消滅したこと(ローン完済)を証明する書類。 |
| 金融機関からの委任状 | 抵当権設定時に作成された契約書原本。この書類に「登記済証」の印が押されています。 |
| 金融機関からの委任状 | 銀行があなたに手続きを委任したことを示す書類。 |
| (場合により)抵当権抹消登記申請書 | 自分で用意することもありますが、銀行が作成してくれる場合もあります。 |
【重要】所有者の権利証(登記識別情報)について
ご自身の「所有権の登記識別情報通知書(権利証)」は、この抵当権抹消手続きでは原則として使用しません。抵当権抹消に必要なのは、あくまで抵当権が設定された際の関連書類です。ご自身の権利証を間違えて提出しないようご注意ください。
法務局のホームページから「抵当権抹消登記申請書」のひな形と記載例をダウンロードし、必要事項を記入します。
記入のポイント
作成した申請書は、提出前に管轄の法務局の「登記相談コーナー」(事前予約制)でチェックしてもらいましょう。無料で専門家に見てもらえるため、不備による差し戻しを防げます。
作成した「登記申請書」と「ステップ①で受け取った書類一式」を、不動産所在地を管轄する法務局に提出します。
申請後、1〜2週間程度で手続きが完了します。法務局から返却された書類の中に、新しい「登記事項証明書」が入っているか確認してください。

自分でできる抵当権抹消ですが、以下のような場合は、費用がかかっても司法書士に依頼すべきです。
売却(決済)と同時に抹消登記を行うため、お金の移動、鍵の引き渡し、登記手続きのすべてを同日・同場所で正確に行う必要があり、司法書士の立ち会いが必須となります。
引越しや結婚などで、登記簿上の住所・氏名に変更がある場合は、抵当権抹消の前に「住所(氏名)変更登記」が必要です。手続きが複雑になるため、専門家に依頼するのが得策です。
書類の作成ミスや法務局からの補正対応などで、手続きの不備で売却スケジュールが遅延するリスクを避けたい場合は、最初から司法書士に依頼しましょう。専門家なら確実に、最短で手続きを完了できます。
抵当権抹消登記は、住宅ローンを完済した方が、その不動産を完全に「自分のもの」として、次の一歩を踏み出すために欠かせない手続きです。
「クリーンな登記簿」こそが、スムーズで高値売却への一番の近道です。
【今すぐやることリスト】
次のステップへ
抵当権抹消登記が終わったら、いよいよ売却の準備段階。まずは、ご自身の不動産が今どれくらいの価格で売れるのか「今の価格を知る」ことから始めましょう。

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