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不動産売却

【売主必見】不動産売却のよくあるトラブル事例と回避策:契約解除・契約不適合責任から価格トラブルまで

不動産の売却は、多くの方にとって人生で最も大きな取引のひとつです。しかしその過程では、売主が思わぬトラブルに巻き込まれるケースが後を絶ちません。「査定額と実際の成約価格が大きく乖離した」「売買契約後に買主から契約解除を求められた」「引渡し後に瑕疵(かし)を指摘され多額の補修費を請求された」──こうした事態は、事前の知識と適切な対応があれば、多くは防ぐことができます。本コラムでは、不動産売買仲介のプロとして日々現場で向き合っているトラブル事例とその回避策を、売主の皆さまに向けて詳しくお伝えします。

1.媒介契約・仲介業者選びのトラブル

売却活動の第一歩は、仲介業者との「媒介契約」の締結です。ここでつまずくと、その後の売却活動全体に影響が及びます。

事例①「囲い込み」による売却機会の損失

「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」を結んだにもかかわらず、業者がレインズ(「指定流通機構」が運営する不動産情報ネットワークシステム(Real Estate Information Network System)の通称)への登録を怠ったり、他社からの問い合わせに対して「商談中」などと虚偽の情報を伝えて買い手を独占しようとする「囲い込み」は、残念ながら業界内で問題視されており、いまだに一部の仲介会社が行っていると言われています。売主が気づかないまま売却活動が形骸化し、本来より低い価格で成約してしまうケースがあります。

【回避策・対処法】

  • レインズの登録証明書を必ず業者から受け取り、実際に登録されているか自身でも確認する
  • 業者から定期的な活動報告(専任媒介は2週間に1回、専属専任は1週間に1回)を受け、問い合わせ状況を把握する
  • 複数社に査定依頼し、対応の誠実さ・透明性で業者を選ぶ
  • 不信感があれば、媒介契約期間(最長3ヶ月)満了時に業者を変更することも検討する

事例②「高値査定」による長期売れ残り

媒介契約を獲得するために、市場相場より大幅に高い査定額を提示する業者が存在します。売主としては「高く売れそう」と期待して契約しますが、実際には買い手がつかず、値下げを繰り返すうちに「長期間市場に出ている物件」というレッテルを貼られ、最終的に当初の適正価格よりも低い価格での成約になってしまうことがあります。

【回避策・対処法】

  • 査定額だけで業者を選ばない。「なぜその価格なのか」根拠(近隣成約事例など)を説明させる
  • 複数社(3社以上)の査定を比較し、大きく外れた高値査定には慎重になる
  • 国土交通省の「土地総合情報システム」などで成約事例を自ら調べておく

2.価格設定・値下げ交渉をめぐるトラブル

売出価格の設定と、その後の価格交渉は、売却結果を大きく左右する重要な局面です。

事例③ 業者からの過度な値下げ要求

売り出しから数ヶ月経過すると、業者から繰り返し「価格を下げましょう」と促されるケースがあります。中には、業者が自社の買取部門や関連会社に安く売るために、意図的に売れない状況を作り出しているケースもあります。焦りから安易に値下げを受け入れてしまうと、本来得られるはずだった売却益を逃すことになります。

【回避策・対処法】

  • 値下げを求められた際は、理由と市場データの提示を求める
  • 値下げの判断は慎重に。小幅な値下げ(5%程度)で反応を見る方法もある
  • 売却期限に余裕を持たせることで、焦りから生まれる不利な判断を回避する

注意ポイント

「買取保証」は一見安心に見えますが、買取価格は市場価格の70〜80%程度が一般的です。期限内に売れなかった場合の「最後の手段」として理解しておきましょう。

3.売買契約前後の買主による契約解除トラブル

売買契約を結んだ後でも、様々な理由で買主から契約解除を求められることがあります。解除の事由によって、手付金の扱いや損害賠償が異なるため、正確な知識が不可欠です。

事例④ ローン特約による契約解除と手付金問題

多くの不動産売買契約には「ローン特約(融資利用の特約)」が付いています。買主が住宅ローンの審査に通らなかった場合、この特約によって手付金を返還した上で契約解除が認められます。売主にとっては、長期間売却活動を止めた上に何も得られないという状況になりかねません。

また、ローン特約の期限切れ後に「やはりローンが通らなかった」と主張して解除を求めてくるケースも見られ、この場合の処理をめぐりトラブルに発展することがあります。

【回避策・対処法】

  • 買主の資金計画(事前審査の状況など)を仲介業者を通じて確認する
  • ローン特約の期限と条件を契約書で明確に定める(期限の明記が重要)
  • 買主の事前審査(仮審査)通過を確認してから本契約を締結する
  • 手付金額を十分に設定する(通常は売買代金の5〜10%)

事例⑤ 買主都合による手付解除と違約金トラブル

買主が「気が変わった」「他に良い物件が見つかった」などの理由で手付解除を申し出るケースがあります。本来、手付解除は「手付金を放棄すること」が条件であり、売主は手付金を受け取って契約を解除できます。しかし、解除のタイミングや合意の内容をめぐって揉めることがあります。さらに、ローン特約期限後の解除なのか手付解除なのかが曖昧な場合、手付金の返還を巡り争いになることもあります。

【回避策・対処法】

  • 契約書の手付解除条項と違約金条項を事前に丁寧に説明・確認する
  • 解除の申し出は必ず書面で受け取り、口頭での合意のみで手付金を返還しない
  • 曖昧な状況になった場合は、早めに弁護士や宅建士に相談する

4.契約不適合責任をめぐるトラブル

2020年4月の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと改正されました。売主にとって特に注意が必要な分野です。

事例⑥ 引渡し後に発覚した雨漏り・シロアリ被害による損害賠償請求

不動産の引渡し後、買主が雨漏りやシロアリ被害、給排水管の欠陥などを発見し、売主に対して「契約不適合」として修補・代金減額・損害賠償・契約解除を請求してくるケースは非常に多いトラブルです。

改正民法のもとでは、買主は「契約の内容に適合しない」と認められる不具合について広く請求権を持ちます。売主が「知らなかった」では済まされないケースも出てきており、売主の責任範囲が実質的に拡大しています。民法上では、買主が不具合を知った時から1年以内に売主に通知すれば請求が可能であり、引渡しから相当期間が経過した後に問題が発覚するケースもあります。

【回避策・対処法】

  • ホームインスペクション(住宅診断)の活用:売却前に専門家による建物状況調査を実施し、既存の不具合を把握・開示する
  • 告知書の正確な作成:「物件状況等報告書」には知っている不具合を漏れなく記載する(隠蔽は後の紛争リスクを高める)
  • 契約不適合責任の免責特約の検討:中古物件の個人間売買では「現状有姿・免責」の特約を設けることが多いが、知っていた不具合には免責が認められない点に注意
  • 契約不適合責任の適用範囲と期限の明確化:売買契約書において契約不適合責任の範囲(例:雨漏り・シロアリ・給排水管のみ等)と期限(例:引渡し後3カ月以内等)を明確に記載する。
  • 瑕疵保険(既存住宅売買瑕疵保険)の活用:保険加入により売主・買主双方のリスクを軽減できる

重要:告知義務違反について

心理的瑕疵(自殺・事故死・忌避施設の存在など)の告知を意図的に隠した場合、引渡し後も売主は契約不適合責任を問われるだけでなく、詐欺や不法行為による損害賠償を請求される可能性があります。不快な事実でも、知っていることは必ず開示しましょう。

5.引渡し・決済時のトラブル

事例⑦ 残置物・越境物の未処理によるトラブル

引渡し時に家具・家電・庭木・物置などの残置物が残っていたり、エアコンの室外機や屋根の軒が隣地に越境しているにもかかわらずそれを申告せずに引き渡したりするトラブルがあります。買主からの処分費用・是正工事費用の請求に発展することがあります。また、引越しスケジュールの遅延で引渡し日に間に合わなかったというケースも少なくありません。

【回避策・対処法】

  • 引渡し前に残置物リストを作成し、撤去するものと残すものを書面で合意する
  • 越境については事前に隣地所有者との覚書を取り付けるか、是正して引き渡す
  • 引渡し日には余裕あるスケジュールを設定し、万が一の場合の対応方法を契約書に明記する

事例⑧ 抵当権抹消・住所変更手続きの遅延による決済ストップ

住宅ローンの残債がある場合、決済と同日に金融機関の抵当権抹消手続きを行うのが通例です。しかし、売主の住所変更登記が未了であったり、金融機関との調整が不十分だったりして、決済当日に手続きがストップするトラブルがまれにあります。

【回避策・対処法】

  • 売却活動開始時点で登記簿上の住所と現住所の一致を確認する。相違する場合は、売主の費用負担となるが、決済時までに住所変更登記を終えるか、決済時に所有権移転登記に先立ち住所変更登記をするよう司法書士に依頼する。
  • 住宅ローン残債がある場合は、早めに金融機関に売却の旨を連絡し、抵当権抹消の段取りを確認する
  • 司法書士との連携を密にし、決済の流れをあらかじめ把握しておく

6.境界・隣地問題によるトラブル

事例⑨ 境界未確定による売却頓挫・価格ダウン

土地の売却において、隣地との境界が未確定のまま売り出すと、買主や買主の銀行から「境界確定が完了してから」と取引を保留されることがあります。確定測量には数ヶ月かかることもあり、スケジュールが大幅にずれ込んだり、最悪の場合は契約解除に至るケースもあります。また、隣地所有者との境界をめぐる争いが表面化し、売却自体が頓挫するケースも見られます。

【回避策・対処法】

  • 売却を決めた段階で境界標の有無を確認し、なければ測量士に依頼して確定測量を早めに実施する
  • 隣地所有者との関係を事前に把握し、立会い調整を余裕を持って行う
  • 公簿売買(面積は登記簿のまま)か実測売買(実際の面積で清算)かを契約書で明確にする

7.税金・費用に関する見落としトラブル

不動産売却に伴う税金や諸費用を見落とし、「手取り額が思ったより少なかった」という後悔は非常に多いトラブルの一形態です。

事例⑩ 譲渡所得税の見落としによる資金計画の狂い

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、所有期間5年以下なら約39%、5年超なら約20%の税率で譲渡所得税がかかります。「3,000万円控除」などの特例を知らずに計画を立てた結果、多額の税金が発生して次の購入資金が足りなくなるケースが稀にあります。逆に、特例の適用条件を満たしているのに申告を怠り、控除を受け損なうケースもあります。

【回避策・対処法】

  • 売却を検討し始めた段階で税理士や仲介業者に税金シミュレーションを依頼する
  • 「居住用財産の3,000万円特別控除」「10年超所有の軽減税率特例」「買い換え特例」などの主要特例を把握する
  • 購入時の売買契約書・領収書を確認し、取得費(購入価格)を正確に把握する(書類紛失で取得費が概算5%しか認められないケースがある)
  • 売却翌年の確定申告を必ず行う(適用する特例がある場合は申告が必要)

費用の見落としにも注意

仲介手数料(売買価格の3%+6万円+消費税が上限)、住宅ローン繰上返済手数料、引越し費用、測量費用、建物解体費用、印紙税など、売却に伴う費用は多岐にわたります。事前にすべての費用を洗い出し、「ネット手取り額」を把握した上で計画を立てましょう。

8.トラブルを未然に防ぐための総合チェックリスト

これまでのトラブル事例を踏まえ、売主として押さえておきたい重要チェックポイントをまとめます。

① 仲介業者は複数社を比較し、レインズ登録・活動報告などの透明性を重視して選ぶ
② 査定額の根拠を必ず確認し、「高値査定」に惑わされない
③ 物件状況等報告書(告知書)には知っている不具合をすべて正確に記載する
④ ホームインスペクション(住宅診断)の実施を検討し、既存不具合を事前把握・開示する
⑤ 売買契約書の内容(特にローン特約・手付解除条項・違約金・引渡し条件)を十分に確認・理解する
⑥ 境界標の確認と確定測量を余裕を持って実施する
⑦ 住宅ローン残債がある場合は、早めに金融機関と抵当権抹消の段取りを確認する
⑧ 登記簿上の住所と現住所の一致を確認し、相違があれば住所変更登記を先行させる
⑨ 引渡し前に残置物の扱いと越境物の有無を確認・合意する
⑩ 売却に伴う譲渡所得税と各種費用を事前にシミュレーションし、適用特例を漏れなく活用する
⑪ 不明点・不安点は仲介業者・弁護士・税理士などの専門家に迷わず相談する

9.まとめ:安心・安全な売却のために

不動産売却のトラブルは、「知らなかった」「業者に任せきりにしていた」という状況から生まれることがほとんどです。本コラムでご紹介したトラブル事例とその回避策は、決して他人事ではありません。

大切なのは、①信頼できる仲介業者を選ぶこと、②物件の状態を正直に開示すること、③契約書の内容を理解してから署名すること、④税金・費用を事前に把握すること──この4つの基本姿勢です。

不動産売却は、適切な準備と知識があれば、安心・安全に進めることができます。少しでも不安な点があれば、一人で抱え込まず、経験豊富な仲介業者や専門家に早めにご相談ください。皆さまの大切な資産が、満足のいく形で次の方に引き継がれることを願っています。

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