〜人口動態・相続急増・不動産二極化が変える市場の現実と、今動く理由〜
「ニュースでは不動産価格が上昇していると言っている。まだまだ高値が続くだろうから、急いで売る必要はない」——そう考えていませんか?
たしかに、2026年現在、都心の不動産は依然として高水準を維持しています。しかし、その「高値」がいつまでも続くと思っているとしたら、それは大きな誤解かもしれません。
今、不動産市場には静かに、しかし確実に、新たな「潮目」が近づいています。キーワードは「団塊世代の大量相続」と「不動産の二極化」です。これから5〜10年で、相続を起因とした大量の不動産が市場に放出される時代が本格化します。供給が増えれば、買い手の選択肢も増える。特に郊外・地方の物件は、今のうちに動かなければ「売れない時代」が来る可能性があります。
本コラムでは、不動産売買仲介のプロとして、その構造的な変化をデータとともにわかりやすく解説し、「今なぜ動くべきか」をご説明します。ぜひ最後までお読みください。
目次
「団塊の世代」とは、1947年〜1949年生まれのいわゆる「ベビーブーム世代」のことです。第二次大戦直後の出生ラッシュで誕生したこの世代は、人口的なボリュームが圧倒的に大きく、日本の高度経済成長・バブル経済を牽引してきた世代です。
2025年に全員が75歳以上(後期高齢者)となり、「2025年問題」として広く知られるようになりました。しかし重要なのは、「2025年という1年で何かが劇的に起きるわけではない」という点です。
| 「2025年問題」の本質——「始まり」であって「終わり」ではない |
| ● 団塊世代(1947〜1949年生まれ)の人口:約800万人 |
| ● 2025年:全員が75歳以上の後期高齢者に |
| ● 2026年以降:死亡・施設入所・介護移転などによる不動産放出が本格化 |
| ● 注意:2025年に「突然大量の不動産が出る」のではなく、 |
| 「今後10〜20年にわたり、段階的・継続的に供給が積み上がる」という構造的変化 |
| → 「2025年問題が来なかった」と安心するのは早計。今まさに序章が始まっている段階。 |
政府統計ポータルサイトによると、「相続その他一般承継による不動産の所有権移転登記件数」は2012年の約85万件から2022年には約113万件へと、過去10年で3割以上増加しています。
2024年4月に「相続登記の義務化」が施行されたことも追い風となり、今まで放置されていた未登記物件が市場に出てくるケースも増加中です。「いつかやろう」と思っていた相続登記が義務化で動き始めた結果、2026年以降は売却物件の供給がさらに増えていくと見られます。
高齢者が不動産を手放す主なタイミングは以下の3つです。これらが今後10〜15年の間に大量に重なってきます。
| タイミング | 内容と市場への影響 |
| 死亡による相続 | 子世代が相続するが、すでに自分の家を持っているケースが多く、売却を選択しやすい |
| 施設入所・介護移転 | 自宅が空き家になり、維持費・税金の負担から売却を検討するケースが増加 |
| 住み替え・ダウンサイジング | 広すぎる一軒家から利便性の高いコンパクト住居へ。旧自宅が市場に放出される |
重要なのは、相続した子世代の多くがすでに自分の住まいを持っており、「実家をどうするか」に悩む層が急増しているという事実です。感情的なつながりから「とりあえず持っておこう」と判断する人も多いのですが、その結果が後々「売れない・貸せない」という負の資産になるリスクがあります。
不動産価格を決める最も基本的な原則は「需要と供給のバランス」です。買いたい人(需要)より売りたい物件(供給)が増えれば、価格は下がる。これは経済の基本原則です。
| 2026年以降に起きる「需給の構造変化」 |
| 【供給サイド(増える要因)】 |
| ・団塊世代の死亡・施設入所に伴う相続不動産の放出 |
| ・相続登記義務化による眠っていた未登記物件の市場流入 |
| ・空き家対策特措法による管理不全空家への規制強化→売却促進 |
| ・維持費・固定資産税負担増から売却を決断する所有者の増加 |
| 【需要サイド(減る要因)】 |
| ・住宅購入の主力層(30〜40代)の人口減少が続く |
| ・金利上昇で買い手の借入可能額が縮小 |
| ・団塊ジュニア(1971〜1974年生まれ)も50歳超え→購入需要の主力から外れる |
| ・少子化による将来的な世帯数の減少 |
この「供給増×需要減」という構造的な変化が、これから徐々に、しかし確実に不動産価格に下押し圧力をかけていきます。ただし、すべての不動産が同じように影響を受けるわけではありません。ここに「二極化」という問題があります。
不動産専門家の間で近年注目されているのが、地価の「4極化」というコンセプトです。単純な「上がる・下がる」ではなく、エリアや物件特性によって4つのゾーンに分かれていくという見方です。
| ゾーン | エリアの特徴 | 現状 | 今後の見通し |
| ① 値上がり | 都心・人気エリア・再開発地区・工場進出地周辺 | 高値維持・上昇継続 | 当面は底堅い。海外資金・投資需要も下支え |
| ② 横ばい | 首都圏近郊・利便性の高い地方都市 | 緩やかな安定 | 金利動向・人口推移次第。注意が必要 |
| ③ 下落 | 地方・郊外・過疎エリア | すでに下落傾向 | 供給過多・人口減が重なりさらに下落加速のリスク |
| ④ 売れない (負動産化) |
限界集落・老朽物件・利便性ゼロのエリア | 売れず・貸せず | 今後「負動産」として資産価値がなくなる可能性大 |
重要なのは、③と④のゾーンが全国的に広がっていくという事実です。「地方の話」と思っていた方も、首都圏の郊外・近郊エリアでも同様のリスクが見え始めています。「利便性の低い郊外の一軒家」は、今後10年で大きくこの分類が変わる可能性があります。
「今は価格が高いから、慌てて売らなくていい」という思考は一見合理的に見えますが、落とし穴があります。
不動産市場の「高値」は、ある日突然終わるのではなく、じわじわと、そして気づいたときには取り返しのつかない形で変わります。「まだ大丈夫」と思っているうちに、最も高く売れる機会が過ぎてしまうのです。
不動産の主な買い手は30〜40代の子育て・住居取得層です。しかし日本の人口動態を見ると、この世代の人口は今後も減少し続けます。さらに2026年には団塊ジュニア世代(1971〜1974年生まれ)が50歳を超え始め、住宅需要の主力層から外れていきます。
これは「今後、買い手の絶対数が構造的に減っていく」ということを意味します。供給(売り手)は増え、需要(買い手)は減る。この方程式が続く限り、不動産市場の競争環境は売り手にとって年々厳しくなっていきます。
不動産の価格は、築年数が経つにつれて下がる傾向があります。特に建物(上物)の価値は経年とともに減少し、売却価格に影響します。加えて、以下のような要因も重なります。
| 時間が経つほど売りにくくなる3つの理由 |
| 【① 建物の老朽化】 |
| 空き家や管理不足の物件は傷みが進み、売却前のリフォーム・補修コストが増大する。 |
| 空き家対策特措法の強化で「管理不全空家」に認定されると固定資産税が最大6倍になるリスクも。 |
| 【② 競合物件の増加】 |
| 相続物件・空き家の放出が続くと、同じエリアで似た価格帯の物件が増える。 |
| 買い手の選択肢が増えると、選ばれるための条件(価格・状態・立地)が厳しくなる。 |
| 【③ 人口流出による地域の魅力低下】 |
| 周辺の空き家が増えると街の活力が落ち、学校・病院・商業施設の縮小・閉鎖が進む。 |
| エリア全体の不動産価値が下がる「負のスパイラル」が起きることがある。 |
相続で実家を取得した方の中には、「すぐに売るのは忍びない」「もう少し様子を見てから」という理由で、何もしないまま数年が経過するケースが非常に多くあります。しかし「何もしない」は「コストがかからない」ではありません。
| コスト・リスクの種類 | 具体的な内容 |
| 固定資産税 | 所有している限り毎年課税。管理不全空家に認定されると最大6倍になる可能性 |
| 維持・管理費 | 草刈り・清掃・点検・害虫駆除など年間数万〜十数万円の維持費が継続発生 |
| 建物の劣化 | 人が住まない建物は急速に劣化。数年で修繕費が数百万円規模になることも |
| 売却機会の損失 | 価格が高い今のうちに売れば得られたはずの利益を、先延ばしで失うリスク |
| 賠償リスク | 外壁落下・倒壊などで第三者に損害を与えた場合、所有者が賠償責任を負う |
| 相続手続きの複雑化 | 放置するうちに次の相続が発生し、権利関係が複雑化して売却が困難になる |
「持っているだけ」はコストです。そのコストが積み重なる一方で、物件の価値は下がり続けます。「先送り」は最もコストの高い選択になりかねません。
「大量供給時代が来る」と聞くと悲観的になるかもしれませんが、裏を返せば「今はまだその波が来る前」ということでもあります。現在の市場環境は、売り手にとって依然として有利な条件が揃っています。
| 2026年現在、売り手に追い風の3つの事実 |
| 【追い風① 地価は4年連続上昇中】 |
| 国土交通省の地価調査によると、全国の地価は2022年から4年連続で上昇。 |
| 都市部を中心に不動産価格は依然として高水準を維持している。 |
| 【追い風② 中古住宅需要が拡大している】 |
| 新築マンション価格の高騰(首都圏平均1億円超)を背景に、中古住宅へのシフトが加速。 |
| 2026年度税制改正で住宅ローン控除の中古枠が拡充予定で、中古需要がさらに高まる見込み。 |
| 【追い風③ 海外投資家の需要が底堅い】 |
| 円安局面で日本の不動産は海外投資家に「割安」に見えやすく、都市部への海外マネーの流入が続く。 |
| 投資事業不動産の取引額は2025年に過去最高を更新。この活況が2026年も継続見込み。 |
この「まだ追い風がある」状態がいつまで続くかは、金利動向・人口動態・海外資金の動きによって変わります。確実に言えるのは、今から5〜10年後は、今より売りやすい環境が保証されているわけではないということです。
不動産の売却適期は、以下の2つの条件が重なるタイミングです。
この2条件が重なる時期は永遠には続きません。2026年の現状は、都市部・人気エリアでは条件が揃っているものの、郊外・地方では既に「価格は維持されていても買い手が少ない」状態が始まっています。
不動産仲介の現場では、「もう少し待てばもっと高く売れるかもしれない」という売主の期待が、最終的に「買い手がつかなくなって結果的に安く売ることになった」という後悔に変わるケースを何度も見てきました。「今が最高値かどうか」は、後になってしか分かりません。だからこそ、リスクをとって待つより、「今の高値で確実に成約させる」という判断が合理的なのです。
相続物件や空き家の供給が増える中で、買い手は必然的に「より良い物件」を選ぶようになります。今後の市場で「選ばれる物件」になるためのポイントを整理します。
| 判断基準 | 売れやすい物件の条件 |
| 立地・アクセス | 駅から徒歩圏内、主要交通網へのアクセスが良好、生活利便施設が充実 |
| 建物の状態 | 外観・内装が良好、設備が使える状態、建築年数が比較的新しい |
| 登記・権利関係 | 名義が明確、抵当権が抹消済み、相続人間で合意が取れている |
| 価格設定 | 周辺相場に対して適正、売出価格と成約価格の乖離が小さい |
| タイミング | 春・秋の不動産繁忙期(3〜4月、9〜10月)に合わせて売り出す |
逆に言えば、「相続登記が未完了」「複数の相続人間で合意が取れていない」「建物の老朽化が進んでいる」「立地が郊外・地方」といった条件が重なるほど、売却が困難になります。これらは時間が経つほど解決が難しくなる問題でもあります。
「売却を考えよう」と思ったとき、最初にすべきことは「物件の現状を正確に把握すること」です。以下を順番に確認しましょう。
| 確認事項 | チェックの方法・ポイント |
| ① 登記名義人の確認 | 法務局で「登記事項証明書」を取得。名義が亡くなった方のままなら相続登記が必要 |
| ② 相続登記の状況 | 2024年4月から義務化。登記が未了なら3年以内(過去分は2027年3月31日まで)に手続きを |
| ③ 住宅ローンの残債 | ローンが残っている場合は「残高証明書」で確認。売却価格で完済できるか(アンダーローン)を判断 |
| ④ 不動産の時価 | 複数の不動産会社に査定を依頼。「成約実績ベースの価格」と「売出価格」の違いを理解する |
| ⑤ 建物の状態 | インスペクション(建物状況調査)を実施すると、買い手の安心感が高まり成約しやすくなる |
「売りたいと思ったけれど、名義がまだ亡くなった親のままだった」というケースは、不動産仲介の現場で非常によく見られます。相続登記が完了していない物件は売却できません(法的に所有者として売買契約を結べない)。
2024年4月から相続登記が義務化され、正当な理由なく放置すると10万円以下の過料の対象となります。また、2024年4月以前の相続で未登記のものは2027年3月31日が期限となっています。
相続登記は司法書士に依頼するのが一般的で、費用は登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)+司法書士報酬(6〜7万円程度)が目安です。当社でも提携の司法書士をご紹介できますので、お気軽にご相談ください。
不動産を売却して利益が出た場合(譲渡所得がある場合)は、税金がかかります。ただし、条件を満たせば有利な節税特例を活用できます。
| 売主が使える主な節税特例(2026年現在) |
| 【特例① 居住用財産の3,000万円特別控除】 |
| 自分が住んでいた(または住まなくなって3年以内の)家を売る場合、 |
| 譲渡所得から最大3,000万円を控除できる。 |
| ※ 住まなくなった日から3年目の12月31日までの売却が条件 |
| 【特例② 相続した空き家の3,000万円特別控除】 |
| 相続した家屋で一定条件を満たすものを売る場合、同様に最大3,000万円控除。 |
| ※ 1981年5月31日以前に建築・相続後3年目の年末まで・売却価格1億円以下など条件あり |
| ※ 相続人が3人以上の場合は2,000万円まで(2024年以降の売却から適用) |
| 【特例③ 長期譲渡所得の軽減税率】 |
| 所有期間10年超の居住用財産の売却は、通常より低い税率が適用される |
| ※ 適用可否は個別の状況によって異なります。必ず税理士にご相談を。 |
「相続した家の3,000万円控除は相続開始から3年目の年末まで」という期限は絶対的です。相続後に「そのうち売ろう」と後回しにしていると、この控除が使えなくなります。特例の適用期限を意識して早めに行動することが、手取り額を最大化するための重要なポイントです。
「大量供給時代が本格化する前に動く」ために、今すぐ確認・実行すべき事項をリストにまとめました。
| ■ 物件・権利関係の確認 |
| □ 登記名義人が現在の所有者と一致しているか確認したか |
| □ 相続が発生している場合、相続登記は完了しているか(2027年3月31日が過去分の期限) |
| □ 複数の相続人がいる場合、全員が売却方針に合意できているか |
| □ 住宅ローン残債がある場合、残債額を把握しているか(残高証明書で確認) |
| □ 建物に著しい傷みや雨漏り・シロアリ被害がないか確認したか |
| ■ 市場・価格の確認 |
| □ 近隣の成約事例(実際に売れた価格)を調べたか(不動産会社に依頼or不動産情報ライブラリを活用) |
| □ 複数の不動産会社に査定を依頼したか(1社だけでなく複数比較が重要) |
| □ 「相場より高い査定」に飛びつかず、根拠のある査定を選んでいるか |
| □ エリアの価格トレンド(上昇・横ばい・下落)を把握しているか |
| ■ 税金・特例の確認 |
| □ 居住用財産の3,000万円控除の適用要件(住まなくなった日から3年以内等)を確認したか |
| □ 相続した空き家の3,000万円控除の期限(相続開始から3年目の年末)を意識しているか |
| □ 税務上の扱いについて、税理士に相談したか(不動産仲介会社は税務アドバイスができないため) |
| □ 売却にかかる諸費用(仲介手数料・登記費用・引越し費用等)を把握しているか |
| ■ 売却タイミングの確認 |
| □ 「もう少し待てば高くなる」という根拠のない期待に基づいた先送りをしていないか |
| □ 維持費・固定資産税・管理費などのコストが毎年積み上がっていることを認識しているか |
| □ 不動産の繁忙期(3〜4月・9〜10月)に合わせて売り出しのタイミングを計画しているか |
| □ まずは査定を依頼して「今いくらで売れるか」を把握しているか(査定は無料・売却義務なし) |
「あのとき売っておけばよかった」——不動産仲介の現場で、このような声をお聞きするのは珍しいことではありません。多くの場合、それは「高値のうちに売ればよかった」という後悔です。
今、日本の不動産市場は静かに、しかし確実に変わり始めています。団塊世代の大量相続が本格化し、供給が増え、買い手の層が減り、エリアによっては価格の下落が始まっています。都市部・人気エリアでは依然として活況が続いていますが、それがいつまでも続く保証はありません。
「いつかは売ろう」と思っている方に、改めてお伝えしたいことがあります。不動産売却において「最も高く売れる機会」は、待てば来るものではありません。今の市場環境を正確に把握し、専門家と連携しながら、適切なタイミングで動くことが、最善の結果を生みます。
我々「うるラボ」では、物件の無料査定・売却相談・税理士・司法書士との連携紹介まで、ワンストップでサポートしております。「まず価格だけ知りたい」「売る気はまだないが情報だけ集めたい」という段階のご相談も大歓迎です。
【免責事項】
本コラムは情報提供を目的としたものであり、投資・売却の推奨や個別の法律・税務アドバイスではありません。不動産売却の判断は、物件・市場・税務の状況により異なります。必ず不動産会社・税理士・司法書士など専門家にご相談の上、ご自身の判断でお決めください。

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