不動産を売却した翌年の6月「身に覚えのない請求書」が届いて愕然とする方がいます。住民税、国民健康保険料、介護保険料──売却益に連動して跳ね上がるお金の存在を、売る前に知っている方はほとんどいません。
仲介手数料や譲渡所得税は多くの方が意識しますが、翌年6月に届く請求まで見通して売却計画を立てている方は、ごくわずかです。
この記事では、売却後に発生する「想定外のコスト」の正体と、売る前にできる備え方を解説します。
目次
所得税は確定申告時(2〜3月)に納めますが、住民税は翌年6月以降に届きます。不動産の譲渡所得に対する住民税の税率は以下の通りです。
▼所有期間 住民税率
・5年以下(短期) 9%
・5年超(長期) 5%
たとえば長期譲渡所得が1,000万円の場合、住民税だけで約50万円。普段の住民税に上乗せされて届くため、「去年と比べて急に高くなった」と驚く方が非常に多いのが実態です。
ここが一番見落とされるポイントです。国民健康保険料は「前年の所得」をもとに計算されます。不動産を売って譲渡所得が発生すると、その金額がそのまま所得に加算され、翌年の保険料が大きく跳ね上がることがあります。
▼影響を受ける人
・自営業、フリーランス
・年金生活者
・無職
▼影響を受けない人
・会社員(社会保険加入者)
※会社員の保険料は給与で決まるため、不動産売却益は影響しない
65歳以上の方は介護保険料、75歳以上の方は後期高齢者医療保険料にも影響が出る可能性があります。いずれも所得に応じて保険料が決まるため、譲渡所得が加わると保険料の段階が上がることがあります。
相続した実家の売却では、売主が60〜70代であるケースが多く、まさにこの影響を受けやすい世代です。
| 項目 | 影響 |
| 健康保険料 | なし(給与で決まるため) |
| 住民税 | あり(譲渡所得分が上乗せ) |
| 所得税 | 確定申告で納付済み |
→ 翌年6月の住民税の増額だけ備えておけばよい。
| 項目 | 影響 |
| 国民健康保険料 | あり(譲渡所得がそのまま加算) |
| 住民税 | あり |
| 介護保険料(65歳以上) | あり |
| 後期高齢者医療保険料(75歳以上) | あり |
| 所得税 | 確定申告で納付済み |
→ 翌年6月に住民税+国保+介護保険が同時に跳ね上がる。これが「税金地獄」の正体です。
3,000万円特別控除を使って譲渡所得がゼロになった場合、住民税も国民健康保険料も介護保険料も跳ね上がりません。控除によって「所得が発生していない」状態になるためです。
つまり3,000万円控除は——
| 効果 | 内容 | |
| ① | 譲渡所得税をゼロにする | 確定申告時の所得税がゼロに |
| ② | 翌年6月の住民税増額を防ぐ | 住民税の上乗せがなくなる |
| ③ | 国保・介護保険料の跳ね上がりを防ぐ | 所得に加算されないため保険料に影響しない |
1つの控除で、翌年6月に届く請求をまとめて防げる。これが3,000万円控除の本当の価値です。
「控除で税金ゼロだから確定申告は不要」——これは間違いです。
3,000万円控除は確定申告をして初めて適用されます。申告しなければ控除はなかったものとして扱われ、譲渡所得がそのまま課税対象に。翌年6月には、控除なしの住民税・国保・介護保険料が届きます。
「控除で税金ゼロだから何もしなくていい」が、一番高くつくパターンです。
※ 3,000万円控除の具体的な適用要件は物件ごとに異なります。必ず税理士にご確認ください。
□ 自分が国民健康保険の加入者かどうか確認したか
□ 売却前に「税金・保険料込みの手取りシミュレーション」を出してもらったか
□ 売却代金の10〜20%は翌年の税金・保険料に備えて残す計画があるか
□ 自分の物件が3,000万円控除の適用要件を満たすか確認したか
□ 相続した物件の場合、相続空き家の3,000万円控除の期限を確認したか
□ 3,000万円控除と住宅ローン控除の併用不可を理解しているか(買い替えの場合)
□ 売却した翌年2〜3月に確定申告を行うスケジュールを確認したか
□ 控除で税金ゼロでも確定申告が必要であることを理解しているか
□ 取得費の根拠となる売買契約書(親が購入したときのもの)を保管しているか
不動産の売却は「売れた日」で終わりではありません。翌年の確定申告を終えて、6月の通知書を開けたときに「想定内だった」と言えて、初めて完了です。
知っていれば、備えられた。知らなかったから、驚いた。
この差をなくすために、売る前に「翌年6月までの資金計画」を立てておくこと。それが、不動産売却で後悔しないための最後のピースです。
「うるラボ」では、査定時に売却価格だけでなく、税金・保険料込みの手取りシミュレーションまでお出ししています。「売れたのに赤字」という事態を防ぐために、翌年6月に届く請求まで見通した上で、一緒に資金計画を考えます。
「うちの場合、翌年いくら払うことになるの?」と気になった方は、お気軽にご相談ください。相談だけでも大丈夫です。
本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務アドバイスではありません。不動産売却に伴う税金・保険料は、物件・所得状況・加入している保険制度により異なります。必ず税理士・お住まいの自治体にご確認の上、ご自身の判断でお決めください。2026年6月時点の制度をもとにしています。
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